もちろんアオの両親はとっくに仕事に行って居ないけど、それなりに申し訳なさを感じるから。
度々訪れてしまうアオの家には、あたし専用のハブラシだって置かれてるし、ほんと自分の家じゃないかってくらいにあたしが入り込んじゃってる。
だから思わず目の前にある鏡で自分を見てため息をついてしまった。
顔を洗って薄い茶色の長い髪を綺麗にし、化粧で顔を整える。
まるで素顔を隠す様に顔を変えた。
2階に上がって、まだ眠っているアオの部屋を開け、そのドアの隅の方に置かれている制服を引っ張って掴む。
そして廊下で着替えたあたしはもう一度アオの部屋に入って、テーブルの上に置かれていた鞄を掴んだ。
と、その拍子にグッと勢いよく引かれる腕。
思わず視線を向けると、まだ眠たそうにするアオが欠伸をしながらあたしの腕を離した。
「若菜(わかな)、もう行くのかよ」
眠そうにそう言ったアオは上半身を起こしながら明るく染まった茶色の髪を無造作に掻く。
「もうって、もう10時前だけど」
「あー…、そっか」
「アオは?行かないの?」
「行く。だから若菜一緒に行こうぜ」
「やだよ」
フイっとそっぽを向く背後からアオの舌うちが小さく聞こえる。
だけど。
「若菜?」
そのアオの沈んだ声で必然的に視線をアオに向けた。