「…――おい、蒼斗、行くぞ」
電話口から不意に聞こえた男の声。
その声の周りからはザワザワと雑音が混じる。
「あぁ、すぐ行く。…悪い、若菜」
「別にいいよ、掛けてこなくても」
「だから気になったっつってんだろ」
「はいはい」
「んだよ、その言い方」
「はい。有り難うございます。蒼斗様」
「はいはい」
「ほら、アオだって適当じゃん。じゃーね、アオ」
「おう」
アオとの電話を切った後、あたしは空を仰いで深呼吸した。
…やっぱ、ここは好き。
それにしてもホント、アオは心配性。
いや、そうさせたのはあたしか?
けど、昔からのあたしの全てを知ってるのはアオしか居ないんだ。
だから何かあったらアオを頼ることしか出来なくて、結局はあたしがいけないんだよ。
でも、アオは昔からモテてて、男女に人気がある。
だから、敢えてあたしはアオと話したくない。
学校では、話したくない。