あの女の人の名前を知ってから、早くも2週間が過ぎてしまった。

行こうか、どうしようか。

そんな事ばかりを考えて。


だからと言って何も行動すら起こせなかった。


変わった事と言えば、麗美さんに紹介をしてもらった小さな飲み屋。

そこであたしはお手伝いする事になった。


もうあれから2週間。


「若菜ちゃん、もうあがっていいよー」


カウンター前からおじさんの声が飛んでくる。

麗美さんが言ってた様にとても優しい人だった。


「あ、はい。でも、ここを片づけてからにします」


流しにまだごちゃごちゃと溜まっている食器。

あまりにもこのままじゃ帰れないと思い、あたしは蛇口から水を出した。


「いい子が入って来たね―、だから最近元気なのかい?」


一人飲みをしていたお客さんが笑いながらそう口にする。


「いやー、もうほんと助かっちゃってね。ありがたいよ、ほんとに」

「これはこれは長生きしますな」

「わはは。お互い様ですわ」


繰り返し続けられる会話を耳にしながら、あたしは着々と手を動かし片づける。