椅子に座って、一息吐く。

目の前に移るあたしは、なんとも言えないほど醜い顔で今にも泣きそうだった。


恭は何を思った?

少しでもセナさんと寄り添ってる事に嫉妬した?


…って、そんな訳ないか。

あたしの事なんて何とも想ってないのに。


でも、これで何かが変わるなんて全く思わなかった。

むしろ、逆に余計に離れちゃうんじゃないかって、そう思った。


ギュッと握りしめていた小さな紙に気付く。

手を開けると、クシャクシャになってて、それをあたしは綺麗に開けた。


「…なにこれ」


電話番号だと、思いこ込んでたけど、そうじゃない。

番号なんて全く書かれてなくて、むしろそこに書かれていたのは見知らぬ女の人の名前。


そしてその下には総合病院の名前と病室だった。

それ以外何も書かれてはいない。


ここに行ってみろと言う事なんだろうか。


だれ、この人。


“党利千沙”


「…とうりちさ」


見ず知らずの名前にあたしはその紙から目が離せなかった。