「うおーい!!」


抱きしめられたまま不意に聞こえた叫んだ声。


「おい、セナ!!お前、こんなとこでイチャイチャ抱きつくなよー」


続けられた笑い声。

その声にセナさんの顔があたしの肩から上がった。


「俺にも癒しがほしいっつーの」


そう言いながらセナさんはあたしの身体からゆっくりと遠ざかる。


「癒しかよ。お前に癒しもクソもねーだろ!女なんか飽きるくらい居る奴がよく言うぜ」

「それは客な。特定はいねーよ」

「で?そこの子の事、特定にするつもりか?」

「そうなってくれたらいいなーって…」

「相変わらずいくね、お前は。なぁ、恭?」


…あの、恭に振らないでくらますか?

なんて思った時、


「さー、どうでもいいわ」


本当にどうでもいいように恭は呟いた。


「ねぇ、若菜ちゃん?」


セナさんの声で振り向く。

セナさんは小さな紙にペンを走らせている途中だった。


「これね、連絡先。電話ちょーだい」


折りたたんである小さな紙。

それを受け取った時、目の前の恭が立ち上がった。