鏡に映る自分は別人だった。
シックな真っ黒のドレスに身を包んだあたしは自分が見ても、変わり果ててた。
昔から麗美さんが憧れの人だった。
だから少しでも近づけたかな、なんて思うとピンと無意識の内に背筋が伸びる。
首元に光るネックレスが眩しくて、あたしには勿体ないくらいだ。
でも今更引き下がる訳にもいかず、ホールに足を運んだ。
店が開くと、ちらほらと客が姿を現す。
いつ来るのか分からず、あたしは何箇所か色んな席に回る。
店内もいつしか客がビッシリ埋まってて、対応すら疲れるくらいになってた。
そして22時を過ぎた頃だった。
「…若菜ちゃん」
そう麗美さんに声を掛けられ、視線をここから離れた席に目を向けると、スーツに身を包んだセナさんが目に入った。
やっぱ、セナさんって美形だな。
その横には恭が居る。
そしてあと一人の男の人。
「とりあえずセナが若菜ちゃんを指名した事になってるから」
「…はい」
「セナの事に頷いときゃいいの」
「でも…」
「何言ってんの、大丈夫だよ。あいつホストだよ。女慣れしてるって」
あまり嬉しくない言葉を麗美さんから掛けられ、思わず苦笑いをする。
麗美さんに背中を押されて、あたしは渋々セナさんの席についた。