「蒼斗って人は知ってますか?」
「…あお、と?」
「はい。あたしと同じ学年なんですけど、恭と昔つるんでたって言ってました」
「あ、あー…そう言えばいたな。そいつがどうした?」
「……」
思わず黙る。
何て言ったらいいのか迷っていると、不意にツンツンと腕を麗美さんに突かれた。
「若菜ちゃん…」
隣から小さな声が聞こえる。
チラッと振り向くと、
「変わりに言おうか?」
麗美さんの心遣いが聞こえた。
だけど、軽く首を横に振って、あたしは正面を向く。
「あの…恭とアオの関係がギクシャクしてます。その事についてセナさんは知ってますか?」
そう言うとセナさんは一瞬、タバコを咥えたまま眉寄せた。
だから、セナさんは知ってるって思った。
そして。
「なるほどな」
セナさんは小さく呟いた。