その言葉の意味を理解するのに数秒の間、理解が出来なかった。

目の前の女は何を言ってんだろう。と、しか思わなかった。


眉間に皺を寄せ、あたしを睨む女は感情を抑えることなく更にあたしを追い詰め、


「蒼斗が辞めたのに何であんたはノコノコ来てんだよ!!」


もう一度バンっと叩かれた机の音であたしの意識がハッとした。


「…え?」


不意に出た小さな声。


アオが辞めた?

なに、それ。

あたし知らない。


「蒼斗が辞める理由なんてアンタしか居ない!!」


空気が重かった。

周りの視線があたしに向く空気が重苦しかった。

だけど、その空気を遮って視線を向けた先は美奈子。


自分の机の前で立ち尽くしてる美奈子はあたしを見ずに俯いてた。


何?何なの?

あんた、知ってたの?


無意識に動く足は美奈子の前で止まる。


「…アオが辞めたって?」


その声に気付いた美奈子はコクンと首を傾げて、すぐに顔を上げた。


「若菜ちゃんの事だから知ってると思ってた。そー言う話しされたくないかな、と思ったから敢えて言わなかったの。若菜ちゃんが知らないなんて思ってもみなくて――…」


その美奈子の声を無視してあたしは急いで教室を飛び出した。