「おはよ、若菜ちゃんっ!」
「…うん」
「うん…じゃないでしょ。おはよーって言ってんの」
「…おはよ」
「うん、おはよ」
相変わらずのこの笑顔に負けてしまう所為か、美奈子をほっとけなくなってしまった。
ほんとなら係わりたくもない存在だったのに、美奈子はあたしを避けようとはしなかった。
それは今でも分からない。
でも心のどこかでは半分は係わりたくない気持ちも混ざっている。
きっと今でもトラウマは消えない。
裏切られるその恐怖感を二度と味わいたくないから。
「これからずっと一緒に登校できるね」
なんて明るい声を聞きながら目の前に見えてくる校舎に思わず一息つく。
きっと、きっと。
変な予知勘ってのがあったかのかも知れない。
教室に入って席に着いた瞬間、バンっと誰かに机を叩かれる鈍い音が耳に突き抜ける。
咄嗟に上げた顔の目の前には見覚えのある女が眉を寄せてあたしを睨んだ。
「どー言う事よっ!!」
罵声のように浴びる尖った声。
だけど、
「あんたの所為じゃん!蒼斗が辞めたのって、あんたの所為じゃん!!」
もう一度浴びせられたその言葉に、息をする事も忘れてしまった。