「悪い」


スッとあたしから離れたかと思うと、アオはあたしに背を向ける。

そして、その背後が少しずつ離れて行くその背に、


「…アオっ、」


呼び止めたけど、アオは一度も振り向いてはくれなかった。


なんなの、アオ…

泣きそうな顔して抱きしめた挙句、何も言わずに無視して。


でも、だけど。


そうだからこそ、アオの心の中が知りたくなった。

あたしに何がしたいの?

あたしになにが言いたい訳?


恭と、何があった?


教えてよ、アオ。


だからと言って、こんな事、恭に聞けるはずがない。

ギクシャクしたまま去ってしまった恭に聞けるわけないよ…


部屋に入ってすぐベッドに倒れ込んだ。

このまま目が覚めなくてもいいってくらいにまで深く目を閉じて、何も考えないようにと頭の中の記憶を殆ど消し去ろうとする。

だけど、それが思う様にはならなくて、込み上げてくるものは残酷な感情だけだった。


人と会いたくない気持ちが高まり過ぎて、ただ、ただ…


この暗闇から抜け出すのには時間がかかってしまった。