「…出てくんの遅くねぇか?」

「……」


ゆっくり振り返ったアオはそう言いながら寂しそうな顔で軽くほほ笑んであたしの傍まで足を進める。


「ってかお前って、いっつもタイミング悪い時に現われるよな。予知勘ねぇのかよ」

「…アオ?」


不意に口が開いた。

だってアオは今まで見せたことのない顔であたしを見るから、咄嗟に口がアオの名前を呼んでた。


辛そうな、悲しそうな、そんな瞳であたしを見るから。


「若菜が居ねぇから寂しいぞ」

「……」

「俺を一人にすんなよ」

「……」

「学校、つまんねーの」

「……」

「だから――…」

「アオっ、」


アオの瞳が次第に赤く染まって揺れ動いた。

でも何もないようにとアオは髪を無造作に掻き乱し、一息吐く。


そして。


バタンッ…と同時に閉まるドアと同時にあたしの身体がアオの胸へと締め付けられてた。

ギュっと力強く締め付けられるあたしの身体。


アオの力があまりにも力強くて、


「…アオ、どうしたの?」

「……」

「アオらしくないよ…」


そう言った瞬間、アオの力が少しだけ緩んだ。