「…なぁ、若菜?俺がお前を好きだと言ったらお前はどうする?」
「……っ、」
…えっ?
アオ、何言ってんの?
「…って、動揺すんなよ」
「……」
ハハッと笑うアオの声がドアを突き抜ける。
まるで見透かされている様なこの感覚がぎこちなかった。
冗談でしょ、アオ。
「冗談だっつーの」
「……」
「ごめんな、若菜。お前を助けられるのは俺だと思ってた。…でも違った」
「……」
「…若菜の事、恭さんには渡したくねーの」
「……」
ドクンと心臓が一気に波打った。と同時になんでか分かんないけど瞳が潤んだ。
ねぇ、アオ?
なんで、そんな事言うの?
「…って、泣くなよ。…気が向いたら来いよ、学校」
この見透かされているこの心に更に心臓が勢いよく飛び跳ねた。
そして、ガタンと秘かに揺れるドア。
アオが立ち上がったんだろうか。
「若菜、俺さ。もう――…いや、何でもねぇや」
言いかけたアオが口を塞ぐ。
何?なんなの、アオ?
だけど、あたしからは口を開く事が出来ず、秘かに聞こえて遠のいて行くアオの足音に耳を傾けるだけだった。
でも、だけど。
なんでなんだろうか。
気づけばあたしは、玄関のドアを開けてた。
グッと開いたドアの隙間から見えるのは角を曲がろうとするアオの後ろ姿。
だけど、開いたドアの音で気づいたんだろうか、アオの足がピタっと止まった。