マンションを出てからすぐに鞄の中にあったスマホを掴む。

画面に“恭”の文字をだしてみたけど、そこからあたしの手は動くことはなかった。


何をどう言ったらいいのか分からない今の立場。


むしろこのまま会いたくないなんて言葉が頭の片隅で過る。


会ってどんな顔をしていいのかも分からないし、恭と居ることで自分をこれ以上責めたくはなかった。



だから思った。


この街からあたしが居なくなればいいって。

この街に居ると、いい事なんて何もない。


居たらきっとみんなを恨んでしまう。



多分きっと、そんな事初めから分かってた事なんだと、そう思った。


昔から窮屈だと思ってた。

この自分の家に帰って居座っている事が何もかも窮屈だと、そう思ってた。


お姉ちゃんがココを出て行った時からそう感じてた。


むしろ父が居なくなってから、ずっとそう思ってた。


ベッドに横になって、溢れそうになる涙をグッと堪える。

自棄に騒がしい心拍が耳にまで伝わる所為で気持が乱れて行く。


その乱れた感情を閉じ込める様にグッと目を閉じて視界を遮った。