「…綺麗なお母さんだよね」
フルーツを口に含む美奈子にあたしはそっと呟く。
「そう?普通だよ。若菜ちゃんのお母さんはやっぱ若菜ちゃんに似て美人さん?」
「……」
その言葉に息詰まってしまった。
何をどう答えていいのかも分からない母の存在。
美人…な訳ないじゃん。
タバコ吸って、酒に溺れて、夜の商売をする母を素敵だなんて一度も思った事がない。
「あっ、ごめん。なんかイケない事聞いちゃった?」
焦った表情で見つめてくる美奈子に一息吐き、首を振る。
「自慢するような母じゃないから」
「ごめん、若菜ちゃん」
「って言うか、謝られる意味が分かんないんだけど」
「ごめん、」
「ほら、また謝る」
フッと笑ったあたしに美奈子はさっきとは打って変わって笑みを漏らす。
「食べよう、若菜ちゃん」
「うん」
多分、喋る事を忘れるくらい美味しいってこの事なんだろう。
美味しさのあまり黙々と食べてたあたしに、美奈子はクスクスと笑ってた。