「ねぇ、どうしてあたしな訳?」
疑問に思った事を隣に座った美奈子に口を開く。
「どうしてって、若菜ちゃんがいいから」
「アンタさ、友達居ない訳?」
「友達?いるよ。若菜ちゃん」
「あ、そう…」
「って言うか、若菜ちゃんこそ居る?いつも一人でしょ?」
「一人が楽だからね」
フイっと背ける先に見えるのは上に続く階段。
その階段からもう一度美奈子に視線を送ると、美奈子はションボリとした表情を作ってた。
「…迷惑かな?」
「え?」
下がってた顔が上に上がると、美奈子はグッと瞳を開けてあたしを見た。
「迷惑かな?若菜ちゃんにとって迷惑?こー言う事するのとか」
「別に迷惑じゃないけど、友達ってのが面倒なだけ」
「…友達?」
「あー…いや、いい。何でもないから気にしないで」
「若菜ちゃんさ、何か抱えてんの?」
「え?」
「あ、ううん。なんでも―――…」
「はい。お待たせ。味は保証できないけど、新作ケーキ」
美奈子の言葉を遮ったのは美奈子のお母さん。
トレンチに生クリームと色とりどりのフルーツが贅沢に乗った可愛らしいケーキ。
そしてガラスコップに注がれたパッシュンフルーツのソーダ割り。
透きとおるその色が食欲を進みそうだった。
「すみません、ありがとうございます」
「ううん。ゆっくりしていってね」
「はい」
「さ、若菜ちゃん食べよう」
お母さんが姿を消した後、美奈子はケーキにグサっとフォークを差し込む。