「あたし、サエコっていいます。若菜の友達です!!恭先輩の事、ずっと前から気になってました」


サエコがスラスラと口を開く。

だけど、友達って何?


思わず“冗談じゃないよ”と、そう思ってしまった。


都合のいい女だけにはなりたくない。


「…ね、若菜?」


なんて言いながら、グイグイ腕を揺さぶってくる。

だから少し眉間に皺を寄せながら、帰りたい気持ちが高ぶった所為で、


「せ、先輩…彼女居ないって」


なんて言葉を口に出してしまった。

と、その瞬間、「は?」と、恭の口から微かな声が漏れる。


“何言ってんだ?”と言わんばかりの表情をし、あたしに向かって目を細める。


その瞳から少しづつ離し、未だに掴んでいるサエコの腕を離そうとした瞬間、


「えっ!?ほんとですかぁ?」


サエコの物凄い弾けた声が耳に張り付いた。


恭はイマイチ理解が出来ないのか、眉を顰めたままで、視線はあたし。

だから余計にこの場を離れたくなったあたしは、


「ご、ごめんサエコ。調子悪いから帰る」


そう言って、ぎこちなくあたしは身を引いた。