「偶然だね、若菜っ!」
グッと肩を掴まれた所為で、必然的に視線を送る破目になる。
…サエコ。
案の定、思った通りであたしの前にはサエコが居る。
その隣には、サエコと同類の派手な女。
その女は目の前に居る恭に視線を向けた瞬間、大きく目を見開いた。
やっぱ、知ってんだ。
「若菜、ちょーどいいじゃん。紹介してよ」
恭に聞こえないようにと、耳元でサエコは言う。
紹介してよ、と言われても、そんな事…
「マジ、超カッコいいんだけど」
後ろからサエコの友達であろう女の秘かに呟く声が聞こえる。
その声にあたしは思わず眉間に皺を寄せてしまった。
やっぱ、嫌。
サエコに、紹介だなんて。
だけど、
「ね、早く。若菜ってば!約束したじゃん」
あたしを追い詰めた。
約束って、別にしてないよね?
何言ってんの、アンタ。