「別に怒ってねーけど…」

「…で、でもっ、彼女居るでしょ?」


何でこんな事を聞いてるんだろうと思った。

でも、半分はサエコの為に一応聞いとこうと思った。


だけど、内心では自分の為に聞いてるようなもんだと、そう思った。


確認。確認。

頭の中で何度もそう呟き、小さく深呼吸をした時、


「は?」


恭の低い声が落ちた。


「あ、いや…ごめん」

「つか何でそんな話になんの?」

「いや、だから。居たら迷惑かなーって…」

「誰が?」

「あたしが、邪魔?」

「は?言ってる意味が分かんねーんだけど…」

「…だね。ごめん」

「つか、いねーよ」

「あ、…そう、なんだ」


なんとも言えないほどあっさりな言葉を返してしまった。


だけど、半分何故か安堵のため息をついてしまう。


「なんかお前、おかしくね?」

「あ、…いや――…」

「あー!若菜じゃん!!」


遮られた声に急に心臓がバクバクしだす。

若干流れる冷や汗に、息が詰まりそうになる。


振り向かなくったっても分かるその声に、ここから早く逃げたい…とそう思った。