どれくらいの時間を美奈子と共にしたのか分かんなかった。
他愛ない会話をし、こんなに美奈子と長居したのは初めてだった。
「じゃーね、若菜ちゃん」
「うん」
美奈子と別れた時には既に陽は落ち、辺りは暗くなりかけてた。
帰り道、ふと目についたのはビルの屋上だった。
最近行ってない事に、つい長く見上げてしまう。
今から行こうか。
なんて思った時、
「…おい、」
不意に聞こえた低い声にビクンと身体が飛び跳ねた。
「お前、冷てーな。無視すんなよ」
続けられた言葉に視線を向ける。
と、同時にカチ合った瞳に、思わず咄嗟に目を逸らせた。
…なんで会っちゃうの、恭に。
会いたくない。
だけど。
「…あ、偶然だね」
ぎこちなくそう言ってもう一度視線を向けたあたしに、恭はうんざりとしたため息を吐き出した。