美奈子のお母さんの店に来ても何故だか不意に落ちなかった。


…だめ、こんな調子じゃ。


「若菜ちゃん、来てくれてありがとう」


席に着くなり、柔らかく笑みを漏らしたのは美奈子のお母さん。

テーブルの上には飲み物とブリュレが置かれる。


「いえ、こちらこそありがとうございます」

「いいのよ。遠慮しなくて。美奈子がお世話になってるから」

「もー、やめてよ、ママ」


お母さんの声を遮った美奈子は頬を膨らませ、表情を崩す。

そんな2人の風景に、あたしは思わず笑みを漏らした。


「いえ、あたしの方がお世話になってるので」


いつの間にか、あたしが美奈子にお世話になってた。

こんなあたしの事を、見捨てずに居てくれる。


…だから信じていいよね?


「んー…美味しー!」


目の前の美奈子はブリュレを口に含み、笑顔満開。


「ねっ、若菜ちゃんも食べなよ」


そう言って、美奈子は更に微笑んだ。


「うん。いただきます」


表面パリパリのブリュレをあたしも口に運んだ。