「あー、やっぱ若菜じゃん!」


肩に触れられ、覗き込まれたその笑みにあたしの瞳が大きく揺れる。


…サエコ。


「ねー、サエコ先行くよー」


仲間の声が背後から聞こえる。


「はーい」


なんて目の前のサエコの声が聞こえる。


なんで、会いたくもない人に会うの?

相変わらず派手な格好をしたサエコは口元に笑みを作る。


髪だって、物凄く明るくて。

化粧はバリバリで、耳にはピアス。

スカートは物凄く短い。


だけど。

あたしも前までサエコと同じだった。


いつも同じ様な格好をして騒いでたっけ?

物凄く仲がよくて弾けてたっけ?


だけど。

今は忘れたい、アンタの事。


「ちょっとなんか若菜、地味になってない?」


サエコは昔のあたしを想像してたのだろうか。

全身を見渡す様に、視線を上下する。


「…サエコ、なに?」


小さく口を開けば、サエコは更に口角を上げた。