「あっ、あたし。そこのコンビニに寄るから」


そう言って、目の前に見えるコンビニを指差した。


「なんか買うのか?」

「飲み物をね」

「んじゃ、俺も」

「あ、うん」


先に入った恭の後に続いて、足を店内に踏み入れる。

飲料水の扉を開け、ペットボトルのレモンティーを手にすると、一瞬にしてあたしの手からすり抜ける。


「…――あっ、」


思わず振り向くと、既に恭の手に渡っていて、そのままレジに向かう背後を追っかけた。


「えっ、いいよ。自分で払うから」


レジの棚に置いた恭の隣に素早く近づいてそう声を掛ける。


「いいって」


そう言いながらも、既に恭はお金を払い、あたしの手元にレモンティーが戻ってくる。


「…ごめん。なんか」

「別に。けど、ちょっとだけい?」


コンビニを出ると、恭はタバコの箱を取り出して軽く揺する。



「あ、うん。いいよ」


咥えたタバコに火を点けると、持っていた缶コーヒーのプルタブを恭は開ける。


…と、その姿を見てると、あたしの背後から甲高い笑い声が近づき――…



「…あれ?若菜?」


その明るい声に一瞬、身体が凍りついてしまった。



変な直感だった。

絶対に忘れないだろうと言うその弾けた声を耳にすると、過去に遡ってた。