「いや、飲んでねーよ。欲しかったらやるけど」
「えっ!?ほんとに?」
「あぁ、全部やるから」
恭はもう一度キッチンに向かい、棚から袋を取り出してる。
そしてすぐに戻ってきた恭は紙袋をあたしに差し出した。
「ほんとにいいの?」
「ああ」
「アンタ飲まないの?」
「飲まねーし」
「そう。ありがとう…。んじゃ、あたし帰るから」
「送る」
貰った紅茶を鞄の中に詰め込みながら、恭に視線を送った。
「あー…この近くの駅まででいいや。そっから帰るから」
「つか、そこまで送るんだったら送るけど」
「でも、なんか悪いしね」
「いや、ここに連れて来たの俺だし」
「まぁ…だけど――…って、わぁっ!!」
鞄を肩に掛けて振り返った先に見えるのは、これはまた途轍もない夜景。
慌ててガラス張りに駆け寄って、両手をつける。
そのまま見下ろしたあたしは急いでバルコニーへ出るドアに駆け寄った。