“比べる価値もねーの”


そう言った恭の低くて小さな声が胸に響いてしまった。


だけど、そんな事を言う恭の心の中が知りたくなった。


あたしだって、あのビルの場所は好き。

毎日行っても飽きないし、凄く落ち着くから。


でも、ここと比べたら違うでしょ?

比べる価値もないって言ったけど、あのビルよりは相当に凄い場所。


こんな物凄い部屋に居たら、自慢出来ちゃうじゃん。


なのに、なんでアンタはすぐそう…見下そうとしてんの?

あたしにしたら今の生活が嫌にしか、聞こえない。


そんなのあたしにとったらただの嫌味にしか聞こえないんだけど。


…あたしの生活の方が、よっぽど嫌い。


すぐにでも抜け出したいって、そう思ってんのに…


次第にリビングの一面のガラス張りから見える街並みが段々とオレンジ色に包まれていた。

陽が暮れていくのを、この高い位置から見下ろすとまるで日本じゃないかの様に思える。


オレンジ色が街を包み込む。


こんな最上階からしか眺められない光景に、胸が飛び跳ねてた。


普通じゃ見れないこの光景。


なんだか、ちょっとだけ生き返った気分だった。