「…別に」


思わず冷たい呟きに眉間に皺が寄る。

口に頬張ろうとしていたメロンの手を止め、もう一度皿に置く。


カシャンと皿とぶつかってフォークの音が微かに響くと同時に、あたしは恭に視線を向けた。


「あ、あのさぁ…思うんだけど、もっとこう…“そうだよね”とか、ないわけ?」

「…ねーよ」

「あっ、そう…」


フイっと顔を背けてガラス張りに目を向ける。


やっぱ、掴めない奴。

優しいのか、冷たいのかよく分かんない。


急に優しい場面もあったり、急に冷たくなったり、忙しい人。


「…じゃ、お前はどうなの?」

「え?」


不意に聞こえたまともな声に身体が反応する。

気づけば、視線を恭に向けてて、小さく首を傾げた。


「あのビルはお前にとってどーなの?」

「どう…って、」

「良いのか良くねーのかって事」

「そりゃ…好きだよ。落ち着くから」

「だから俺もそれ」

「え?」

「ここより断然落ち着く。だから別にここと比べる価値もねーの」


恭の小さな声が頭にこだました。