何でそこにいつも居るの?って、そう聞きたい。

あたしが先にここに来るか、彼が先に居るか、どっしにしろ彼はいつもそこに、そのベンチに居る。


雨の日以外はいつも居る。


丁度、彼を初めて知ったのも去年の今頃だった。


まるで、そこで孤立しているようなその彼が、何をしているのか自棄に気になり始めたのが半年前。

だからなんだろう。

あたしもいつもここに来る理由は。


彼の存在が気になって、足を運んでしまうようになったのは…


暫くボーっと、真向かいのビルを見つめていると、急に鞄の中の携帯が震えだした。

その鞄の中に手を携帯を掴む。


「…美奈子、か」


フーッと息を吐き捨てて、とりあえず携帯を耳に当てる。


「もしもーし、若菜ちゃん?」


ガンガンと甲高い声に一瞬眉を寄せ、少し耳から携帯を遠ざける。


「若菜ちゃんっ、聞いてる?ねぇ、若菜ちゃんっ、」


続けられるその声に、もう一度眉間に皺が寄った。