あたしの目の前には今美味しそうなケーキがたくさん並んでる。


そして目の前には親友2人。


2人ともやたらと目を輝かせながらあたしを見てニコニコ笑ってどれでも好きなの選んでねと言ってる。


最近あたしケーキ食べ過ぎだから減らそうと思ったのにな。


とはいえ、せっかく連れてきてもらったんだからショートケーキをちゃっかり選んでるあたし。


苺のショートケーキ。


あたしの1番大好きなケーキ。





「で、2人がケーキをおごってくれるなんて何かあるの?」




フォークで突き刺した苺を頬張る。んーやっぱり旬の苺は甘くて美味しい。





「「あ、あのね・・・」」




そんなところでハモらなくても。でもどうやらこれはお願い事?あたしにお願い事ってなんだろ?




「き、キスってどうやったらできるの?」




「は、はい?!」




目の前の2人はやたらと顔を赤くしてあたしを見つめてる。


そんなことあたしに聞かれても困るんだけど。
言葉を発したのは今年の春から同じクラスに編入してきた唯野咲紀子。


肩までの髪の毛。小さな背。友達思いの優しい女の子。

彼女にはちょっと照れ屋で可愛い彼氏がいる。


かいくんこと海崎 広翔くん。




ちなみに彼をかいくんと呼んでるのはあたしくらい。


まあこれが良かったのか悪かったのか2人を繋ぐきっかけにはなったんだよね。





照れ屋なのに片想い歴が長かったのは彼のほう。




2人が知り合って付き合うまでにはいろいろあったけど彼を追いかけて編入してきた咲紀はやっぱりすごい。




まあ、元々編入の意思はあったみたいだけど友達のために


自分のやりたいことより友達優先できるのはある意味尊敬を通り越して心配。



でもかいくんと付き合うようになってからは自分を優先するようにはなったかな。
その隣にいるのは岩瀬 未彩。


長いロングの髪の毛と大きな二重。華奢な体。


これだけで十分男子を惹きつけるのになぜか彼女は無駄に昔、ギャルがってた。




更にはやたらと彼氏が欲しかったみたいでそれまで結構遊んでたし。




とはいえ実家はお寺ということもありとても厳しく


また彼女もその意思を貫いていたため体の関係はおろかキスすらもさせない

徹底ぶり。



だから遊んでたという表現は違うかな。

多分真実の相手を探してたんだと思う。

そしてその真実の相手が同じクラスの辻宮 隼人。


この男もかなりの曲者で未彩のことが好きなのに失いたくないからと付き合わないで未彩を泣かせた。
当然抗議しまくったけどね。



未彩がこんなやつ好きじゃなかったら


徹底的に罵って再起不能にさせてやろうかと思ってた。




失いたくないから付き合わないなんてそんな理屈が通ると思う?


失いたくないじゃなくて失わない努力をしなさいよ。


あんたなんか認めないって号泣。





ほんとあのときは絶対に認めないって思ってたのに

今は未彩が幸せそうだから認めざるを得ないんだよね。



辻宮も考えを改めたのかほんとに誰にも取られたくない独占欲丸出しで見てて恥ずかしいわ。





まああのモテモテ高瀬櫂くんと


うちのクラスの王子様である寺元央を


トリコにした女の子だから心配になるのは無理ないけど。
高瀬櫂も本当によくモテるんだよね。


甘く爽やかなルックスと声。

すらっと伸びた背。


更には無駄に優しい性格。





こんな最高物件に飛びつかないわけないか。




でも未彩にフラれてから彼女もいないみたいだし。


本当に未彩のこと好きだったんだろうな。




咲紀の友達も高瀬のこと好きだったみたいだけど


あの子じゃちょっとぽっかり空いた高瀬の心の中埋めるのは難しいかもな。




とはいえ、あたしは絶対その役お断り。ちゃんとあたしには彼氏がいますから。






2人の話を聞く前に少しだけあたしは



付き合うまでの日を思い出してた。
「じゃあクラス委員を決めるぞ」





高校入学してまだ数日。


同じ中学の子はいないし心細いな。


そう思ってた矢先の委員決め。あんまり気が進まないけど何かきっかけになるかもと立候補したのは保健委員。



中学のときもやってたしそんなにしんどい仕事もないから無難でいいよね。




「よし。じゃあ保健委員は笠井と宮部な」




笠井くんか。うわ。この人絶対モテる。高校生とは思えない色気があるし顔、かっこいいし。



そう思ってたらやっぱり彼はクラスの人気者になった。



初めて話したのは委員会の集まりの日。クラス毎に並んで座るから当然あたしたちは隣。




「宮部さんって風香って名前なんだ。俺と同じ風ついてるんだな。風同志仲良くしよな」