「きりーつきをつけーれぇい」

「ありあとーございました」

相変わらずやる気の無いあいさつだ。
日直ももっと、声を張ればいいのに。

私は、声すら出していないけれど。

教室を見渡し、楓を探す。
しかし、楓の姿は無かった。トイレかな?

仕方が無いので、自分の席にすごすご座る。

〔ゴトッ〕

重量感のある音。

朝の、あの女子3人が、私の机の上に花瓶を置いた。
目の前に私がいるのに、それをやるのは、すごいなぁ。とぼんやり考えていた。

「おい。」

突然、聞きなれた声がした。楓だ。

「やめろっつてんだろうが」

楓は花瓶を取ろうと手を伸ばす。

「はぁ!?何言ってんの!?」

女子のうち一人、佐々木さんが、楓の手を叩く。っていうか殴った。

「これは、■■ちゃんのためにやってるの!!何で鳥居さんにそれを断る権利があるの!?」

「そうだよ!!いつも毎朝置いた花を片付けないでよ!」

楓と、3人のやりとりに気がついた、女子が何人かこちらを向く。

恥ずかしいなぁ

「■■がやめろって言ってんだよ!」

女子3人が「はぁ?」という顔になる。
そうして、暫くして佐々木さんの隣にいる女子(名前なんだったかな…)が

「やっぱり!コイツ頭おかしいよ!第二世代だからじゃない!?キチガイなんだよ!!キモイ!!」

「雛ちゃん…それはちょっと言いすぎじゃ…」

佐々木さんが雛(っていう名前だったのか)さんをなだめる。


「っちげぇって…!!「やめて」

私は俯いたまま、楓に話しかける。


「もういいよ…やめて」

「でも…」

私のせいで、楓がけなされるのは嫌だから。

「ありがとう。ごめん…。もうお花片付けなくていいよ…」

もしかしたら、いや、確実にこの言葉は残酷だったかもしれない。

楓は、毎日花瓶を私のために、とってくれたから。

それでも、楓が、けなされて、責められるよりは良いと思った。

「そう…か」

楓は一言そういって、自分の席へ戻った。

「やっぱり…あいつ精神が異常なんだよ!」

「あはははは…そうだよね!」

「まさか、■■ちゃんが嫌だって言うわけ無いもんね!」






私は、楓に何も返せないから