私の通う中学についたときには、7時35分になっていた。

教室の前の入り口から入り、マフラーを取りながら私の席を探す。
窓側の列の前から4番目。直ぐに見つかった。
そして、

机の上には、ガラス製の綺麗な花瓶に、ゆりの花が三本、水と一緒に入っていた。
ガラス製の花瓶は、窓から差し込む太陽の光にあたって、キラキラ七色に輝いていた。

「はぁ・・・」

ため息をつく。
教室のすみで、女子3人がクスクス笑っていた。

毎日毎日ご苦労なことで。

じっと、その3人を見る。

そしたら、いそいそと3人は廊下へ出て行ってしまった。

とりあえず席につく。花は後だ。

「おはよう」

ふいに、横から声が聞こえた。

「おはよう。楓。」
私は身体を右に向けて、私の友達を見つめた。
「またかよ・・・。やめろっつてんのにな。」
楓は軽く舌打ちをして、花瓶を持ち、窓際の棚の上に置いた。
「ありがとう。楓。」
「んーう」

鳥居 楓 (とりい かえで)

可愛い苗字と名前とは裏腹に、楓はれっきとした男だった。
最初は気を使って、『鳥居さん』と呼んでいたが、楓はあまり気にしていないようだった。