「まただわ。あら嫌だ。結構近くじゃない。」
ニュース番組を見ながらお母さんが愚痴をこぼす。
私はトーストにマーガリンを塗りなおした。
毎日、朝ごはんはお母さんが作ってくれるけれど、味が薄い。
「また、人口が減っちゃうね」
お母さんが振り返る
「ん?一人しか亡くなってないよ」
ちがうって
「また、今年も引っ越してくる人いなくなっちゃうねってこと。」
「ああ、そうね。嫌だ嫌だ」
トーストをかじる。うん。美味しい。
「そういえばね、この前地区の清掃活動あったじゃない?」
「うん」
「それでね・・・山下…山下さんって知ってる?」
知らないけれど、適当に相槌を打っとくことにした。
時間に遅れそうだ。
「うん」
「でね……」
お母さんの声がどこか遠くから聞こえてくるようだ。
いや、実際には近いんだけど。
なんていうか、左耳から入って右耳から出る状態。
脳みそ通らない感じ。
「ったのよ。で…」
「いただきました」
強制終了
「はーい」
お母さんは気にも留めない。
多分話を聞いていないのをわかっていたんだろう。
私は食べ終わった食器をそのままに、洗面台へ向かった。