「…なあ。綾はそろそろさあ…その…変な変装止めたら?」
口いっぱいにオムライスをほおばっている裕静が突然話し出した。
「だってさあー、綾って性格のぞいてすっげー美人じゃん。スタイルいーしぃ、出るとこ出てっし」
「…死ね」
「そっ、そう言う意味じゃなくてぇ!とにかく、そんなに美人なのに勿体無いってこと!」
「…勿体無いねぇ……」
「そーそ。すげー勿体ねぇ」
「お気遣いどーもっ。でも、私はこのままでいーの」
「…えー」
「盛った豚野郎の相手するより
も、将来のために勉強するほうがいいですから」
「…夢がねぇな。そんな、現実ばっか見てねーで楽にやってきゃーいーのに」
「現実は、そんなに甘くないよ」
「…まあ、いいや。綾はもうちっと肩の力抜いたほーがいーぞってこと!…ん。ごちそーさん」
「はいよ。…まあ、そのつもりでやってくよ」
食器を運びながら、そう返事した。
…楽になんてやっていける訳がない。
そんなことしたら、バチがあたる。
一生懸命生きている人もいるのに。
私は、安定した生活をおくっていければそれでいいんだ。
それ以上の欲は持たない。