「そう」

「連絡先もらったんでしょう? 

かけてみればいいじゃない」

「そう思う?」

「当然よ。 

なんで断るの」


結衣の口調は、何でそんなことを聞くのかというようなものだった。

確かに藍川雅之の連絡先をもらって喜ばない人はいない。

ここで疑い深くなってしまうのが、私の悪い癖かもしれない。


「分かった。 

かけてみる」

「結果、教えてよ」


そう言って結衣は通話を切った。

結衣にあれだけ言われても、なんだかまだ信じられない。

とにかく、電話だけならいいだろう。

私はカードの番号をしばらく見つめ、それから携帯を手に取った。


何を緊張してるんだろう……。


間違えた番号に二回かけてから、やっと実際に存在する番号にかかった。

コールはしているけれど、相手は電話に出ない。

三十秒ほどコールしたところで、私はあきらめて切ろうとした。

その時だった。


「はい、もしもし」


間違いない。

あのレンタルビデオであった、藍川雅之と名乗る男。

低いけれど、安定感があって柔らかい。

聞くだけで少し安心するような、心地いい声。