「どうして分かったの?」


結衣はかなり楽しそうに私の問いに答えた。


「何年一緒にいると思ってるの。 

それくらい分かるって。 

それで、何?」

「あの人の正体が割れたの」

「嘘!? 知ってる人だったの?」

「多分、結衣も知ってる人だと思う」

「マジで? 

ちょっと待ってね。 

誰かな……」


その後、結衣は一通り私が関わった男子の名前を連呼していったが、当然当たらない。

私が聞いたことのない男の名前まで出してくる。

痺れを切らした結衣は私に答えを促した。


「じゃぁ、誰?」

「藍川雅之」

「誰?」

「だから、藍川雅之だって!! 

テレビに出てるでしょ?」


しばらく沈黙が続き、それから困惑した結衣の声が返って来る。


「マジで?」

「うん、マジ。 

連絡先もらったの。 

今、連絡しようか迷ってるんだけど……」

「何やってるの!?」


結衣の叫び声に近い声。

私は思わず携帯を耳から離した。


「何で連絡しないのよ!! 

藍川雅之にアタックされて無視するバカがどこにいるの!!」

「アタックじゃないんだって。 

脚本選びを手伝ってほしいとかって……」


結衣がやっとトーンダウンしてくれたので、私は携帯を耳に当て直した。


「アルバイトのオファー?」

「んまぁ、そんなもんだと思う」

「藍川雅之から直々に?」