懐かしいはげたじじぃのイケボ。
懐かしいコスプレ天使さん。
病院のベッドの上、天井の方。
話す声に目を開ければその二人がオレを覗きこんでいた。
「楽しかったかい?」
重なって聞こえる、低い声と高い声。
「君が今まで見ていたのは夢、だよ」
息の合った声、違った表情。
「全てはもとに戻ったんだ」
何が、と聞きたいのにひゅぅっと鳴るだけの喉。
「君は死んでいないし、未練もない」
にっこり微笑むはげたじじぃがオレの頭を撫でる。
「今まで見ていたのはサンプルだよ。死んだらそうなる、…かもね」
曖昧な言葉を残して、消えていくはげたじじぃとコスプレ天使さんに待ってと言おうとしたら、いきなり意識が薄れていった。
また話す声に目を開ける。
れんとれんの両親、オレの両親とクラスメイトに担任が一斉に話す。
酸素マスクを取り、ひゅぅっと鳴る喉に逆らう。
「みんな…むかつく…」
息のような声を出し、酸素マスクを戻すと窓に目を向ける。
目を閉じれば気持ちがいい、秋風が病室に入ってきた。