れんの家は忙しなく動いていた。
れんの部屋のベッドに座り込んでから何時間がたったのだろうか。

外は真っ赤な夕焼けがぼんやりと窓に写っているのが見えた。
まだ、感覚は残っている。生きているような錯覚に陥りそうだった。


『れん』の入れ物を俺はずっと見ていた。
れんの身体はそこにあった。箱に入って、窮屈そうに。

でもこの身体はれんの入れ物にすぎなくて、れん自身はわからなかった。

れんは頭がよかった。
頭がよかったんだ。
頭がよすぎて、死ぬときは木が沢山あるところで死にたいとぼやいていたことがあった。

どうせ迷惑をかけるからと、木が沢山あるところ…林か森を選んだのだろう。


でも…。


「馬鹿、木が沢山あるところじゃねぇじゃんか…。部屋、だぞ。此処はさ…。」


そう呟いた。
夕焼けが沈み、部屋が暗くなり始めたのがわかる。
いやな静けさがこの部屋を支配しているみたいな錯覚。
蝉の声だけがそこに響き渡り、煩いと思った。