「は?な…んで…?」


やっと出た言葉だった。
声を出そうと口を開いても出るのは嗚咽のみで。
自分は失言症なのではないかと思ってしまうほど、声はでなかった。


「なんでだよ…!嘘、だろ!」


やっと出た言葉に意味はないような気がする。
人間には聞こえていないはずなのだから。これはただの呟きであり、独り言。


「なんで、なんでなんで!!」


人のために、初めて泣いた。


「何処…?何処に行ったんだよ…!!」


零れる涙が温かい。


「馬鹿じゃねぇの…っ、オイ!」


霞む視界に苛ついて、膝をついた。


「なぁ…、なんで?なんで死んでるんだよぉ…!」


あぁ、やっとわかった。


冷たいとわかるそれ。
横たわる冷たいそれ。
俺が泣いている理由。



「れん…!れんれん……馬鹿…!」




全てはお前のためであり、俺のためであった。


「なんで笑顔で死んでるんだよ」


本当は笑顔なんて見えていなかった。

でもたしかに視界に靄がかかるまえに見たんだ。

笑顔で死んでるって。