「…あれ」


気づいたら真っ白い空間で、横になっていた。
寝ていたのだろうか、なにも記憶がなかった。

さっきまでまるで麻酔でもかけられたように…いや、そこだけ消ゴムや絵の具で消されたか塗り潰されたかのように、今までわからなかったものがここにはある。

…言い方を変えれば、感覚がなかったとでもいうのだろうか。


痛い、痒い、くすぐったい、寒い、熱い、眠い…そんな感覚はなにもなかった。
冷たいのはわかっていた気がするが。

「生きてるときと同じだ…懐かしい」


つねればわかる痛み。
痛みなんていつも厄介なくせに、今回ばかりは物凄く嬉しいものだった。

ポツリと無意識に呟いていた言葉にハッとし、驚いた。
懐かしいなんて、そんなに昔でもないじゃないか、と。


立って、これかられんの家に行こうと久々に自分の体重を感じれば、重く感じる。


そうだ、宇宙飛行士が帰ってきたときのような…。
それは歩けないからもしかしたら違うかもしれないけど。