泣いている。
泣いているれんの顔が見える。
必死に叫ぶ、叫んでも伝わらないのに。
「れん…」
オルゴールに触る。
懐かしいそのさわり心地と冷たさは変わらない。
埃も傷ないのはれんの几帳面な性格からだろう。
そっと薇に手をかける。
カチッ…カチッ…と音をならしながら回る薇にれんは気づいていない。
20数回も回している薇が回しにくくなってきたことを確認して、ゆっくりオルゴールがなり始めた。
こんぺい糖の躍り
普通なら子供がこんなものをプレゼントしたり、貰ったり、持ってたりしないだろう。
でも、俺は好きだった。
恐怖を煽られるようで、軽快になるようなところ…。
チャイコフスキーはすごいと思う。
オルゴールは音の速度をだんだんと落としていった。