俺はあの日死んだ。
そう、あの時この世から俺という存在が肉体と共に消えた。

周りの人間の脳内に存在が残っているとも断言はできない。

きっと、今は脳内に存在が残っていても時間がたてばそこでも俺は消えてしまうんだろう。

忘れないと言っても人間は顔から徐々に脳内から消し去っていく。

だから人間は何度も死ぬんだ。


1回目は現実で死ぬ。
2回目は存在が消える。
3回目は脳内で死ぬ。
それで、空に消える。


死んで、消えての繰り返し。

やがて生きていた人間は天国だの地獄だの、星だのになったのだと意思を持たない『物』として扱われてしまう。

それは死んだ後に残せるものは『物』だけだから。

そんな、無愛想でつまらない世界なんだ。