「ぽこさん、イルルは意外と名家の人なんで野菜とか多分触ったことない。」

「名家かは知らないけどとりあえず野菜はよくわからない。」

うーん…。
ツキヨさんの過保護っぷりを見ると
容易に想像できてしまった。

庶民として生きるには無理があるな…。



「うわーうわーごめんなさい!遅れました!」

イルルについて思案していると
誰かがいきなり駆け込んできた。

「ナターシャちゃん、肉屋はどうしたの?」

八百屋嫁が闖入者に話しかける。
ナターシャというらしい。
見た目は20代の真ん中くらい。

「えっ?だって5時半には準備するって言ってたので。」

ぜはぜはしながら答えるナターシャさん。

とりあえず、落ち着いて深呼吸しようか。

「あ、勇者!」

この人も俺の顔知ってるよ…。

「はい勇者です、ぽこぽんです。今日は八百屋ですがね。」

「思ったより人相悪っ。」

正直なお嬢さんだな。
今さら傷つかないけど。

「ナターシャ?」

イルルがナターシャの名前に反応した。