”神崎祥子”が消えた場所を睨みながら、パチリと指を鳴らす。
すると、光の玉が消え、カーテンが自動的に開く。
外からの光が室内を照らす。
不穏な空気を一掃するようだ。
しかし、それとは反対に、心は晴れなかった。
なんたる失態…。
確実に仕留める気だったのに…っ。
「仕留める気だったのか?」
煉夜の問い掛けに、コクリと頷く。
「晴海お兄さん……っ」
「っそうだっ晴海はっ?」
美輝と明人さんが焦りの声を上げる。
「心配いらん。
そうだろ?
結?」
振り向く事なく、こちらもコクリと頷く。
「消える直前に守りの術を掛けた。
死ぬ事だけはないよ。
場所も分かる」
「えっ?!」
気付かれないように、晴海が飛ばされる寸前を狙って術を仕掛けた。
「こう言う事態を想定して、わざわざ暗くしたんだろ?
その上、この時を選んだのにも理由があるんだろうしな」
分かってるんなら、聞かなくても良いのに。
《精霊の加護ね、紅の姫》
その言葉に、仕方なく頷く。
ばれないようにする為に、面倒な演出までしたと言うのに。
「まったく、お前は…」
「何よ。
あらゆる可能性を考えて、備えておくべきでしょ?
特に、ああ言う輩には…」
「確かにな。
だが、結界が役に立たなかったな…私の”更夜”をすり抜けるとは…」
名にもあるように、煉夜は、”夜”と相性が良い。
”夜”の属性を使った今回の”更夜”の結界は、かなり高レベルの術だ。
無理矢理引っ張ってきたとはいえ、中に入った者は、煉の許可なく出ることはできないはずだった。
「相手を甘く見すぎてたかもね。
あそこまで弱らせても、きっちり逃げ切って、更にカウンターまでちゃっかりしていったよ」
「ッ結っ!」
腕には、深い切り傷ができていた。
逃がさないように、足止めの結界を張ろうとしたのだが、術が完成する直前に、印を切ろうとした腕を切りつけられたのだ。
「っちょっ…ッおねぇちゃんっ?!」
「ダメだよッ、すぐに手当てしなきゃっ」
「っどこまで切れてる?!」
それを見た全員がバタバタと走り回るのを、冷静に観察していれば、母が真っ青な顔で腕を取った。
「っ座ってッ。
血を止めなきゃっ」
床には、かなりの量の血が滴っていた。
それを見て、更に色をなくしながら、タオルで傷口を押さえにかかる。
記憶に有る限り初めて触れた母の手は、細かく震えていた。
「もう止まるよ。
治療術は掛けた。
ただ、相手が特殊だから、治るのに少し時間がかかるだけ」
傷を受けた時、すぐに術を掛けた。
本来だったらすでに血も止まり、傷が塞がり出すのだが、どうやら神族と言うのは、色々と勝手が違うようだ。
「結…っこんなのマリュヒャ様に知られたらどうするんだ?!……っ」
驚き過ぎておかしくなったのか、あらぬ事を心配しだした刹那も、分かりやすく血相を変えていた。
「そうだぞ、結っ。
っいいなっ刹那っ、絶対に喋るなよっ。
ポロッと誰かに話してみろっ、首が飛ぶぞっ」
「っっっ絶対に話しませんっ。
血の雨なんて見たくありませんっ」
「そうだっ、月陰全面戦争になるっ」
煉夜も、珍しく焦っているようだ。
「…一体あんた達は、マリュー様をなんだと……」
煉夜と刹那がわけの分からない心配をしている間に、血も完全に止まったようだ。
すると、光の玉が消え、カーテンが自動的に開く。
外からの光が室内を照らす。
不穏な空気を一掃するようだ。
しかし、それとは反対に、心は晴れなかった。
なんたる失態…。
確実に仕留める気だったのに…っ。
「仕留める気だったのか?」
煉夜の問い掛けに、コクリと頷く。
「晴海お兄さん……っ」
「っそうだっ晴海はっ?」
美輝と明人さんが焦りの声を上げる。
「心配いらん。
そうだろ?
結?」
振り向く事なく、こちらもコクリと頷く。
「消える直前に守りの術を掛けた。
死ぬ事だけはないよ。
場所も分かる」
「えっ?!」
気付かれないように、晴海が飛ばされる寸前を狙って術を仕掛けた。
「こう言う事態を想定して、わざわざ暗くしたんだろ?
その上、この時を選んだのにも理由があるんだろうしな」
分かってるんなら、聞かなくても良いのに。
《精霊の加護ね、紅の姫》
その言葉に、仕方なく頷く。
ばれないようにする為に、面倒な演出までしたと言うのに。
「まったく、お前は…」
「何よ。
あらゆる可能性を考えて、備えておくべきでしょ?
特に、ああ言う輩には…」
「確かにな。
だが、結界が役に立たなかったな…私の”更夜”をすり抜けるとは…」
名にもあるように、煉夜は、”夜”と相性が良い。
”夜”の属性を使った今回の”更夜”の結界は、かなり高レベルの術だ。
無理矢理引っ張ってきたとはいえ、中に入った者は、煉の許可なく出ることはできないはずだった。
「相手を甘く見すぎてたかもね。
あそこまで弱らせても、きっちり逃げ切って、更にカウンターまでちゃっかりしていったよ」
「ッ結っ!」
腕には、深い切り傷ができていた。
逃がさないように、足止めの結界を張ろうとしたのだが、術が完成する直前に、印を切ろうとした腕を切りつけられたのだ。
「っちょっ…ッおねぇちゃんっ?!」
「ダメだよッ、すぐに手当てしなきゃっ」
「っどこまで切れてる?!」
それを見た全員がバタバタと走り回るのを、冷静に観察していれば、母が真っ青な顔で腕を取った。
「っ座ってッ。
血を止めなきゃっ」
床には、かなりの量の血が滴っていた。
それを見て、更に色をなくしながら、タオルで傷口を押さえにかかる。
記憶に有る限り初めて触れた母の手は、細かく震えていた。
「もう止まるよ。
治療術は掛けた。
ただ、相手が特殊だから、治るのに少し時間がかかるだけ」
傷を受けた時、すぐに術を掛けた。
本来だったらすでに血も止まり、傷が塞がり出すのだが、どうやら神族と言うのは、色々と勝手が違うようだ。
「結…っこんなのマリュヒャ様に知られたらどうするんだ?!……っ」
驚き過ぎておかしくなったのか、あらぬ事を心配しだした刹那も、分かりやすく血相を変えていた。
「そうだぞ、結っ。
っいいなっ刹那っ、絶対に喋るなよっ。
ポロッと誰かに話してみろっ、首が飛ぶぞっ」
「っっっ絶対に話しませんっ。
血の雨なんて見たくありませんっ」
「そうだっ、月陰全面戦争になるっ」
煉夜も、珍しく焦っているようだ。
「…一体あんた達は、マリュー様をなんだと……」
煉夜と刹那がわけの分からない心配をしている間に、血も完全に止まったようだ。