君の音
恋愛(ラブコメ)
0
くりあんこ/著
- 作品番号
- 869110
- 最終更新
- 2013/03/15
- 総文字数
- 0
- ページ数
- 0ページ
- ステータス
- 未完結
- PV数
- 0
- いいね数
- 0
~由希side~
人差し指で、軽く鍵盤を押してみる。
-ポロン-
あたしはほうと長いため息をついた。
大好きな、傷だらけのピアノ。
「ありがとう、ごめんね」
気づいたら、涙がこぼれていた。服の裾で慌ててぬぐう。その時丁度、玄関からいつもの高い声が響く。
「柚子ー。何やってるの、はやく支度しなさい。もう出るわよ」
「はーい、今行く!」
とっさにピアノの鍵盤に、もうボロボロになったピンク色の布をかけ、あたしはキャリーバックを手に取った。
「じゃあ、行ってくるね」
あたしは急いで家をでた。
時刻は昼過ぎ-。徒歩で数分、駅へと急ぐ母親を追いかけながら、あたしは改札を抜けた。やってきた電車に乗り込む。毎日利用しているのに、この日はなぜか別の意味で緊張していた。
「これ、娘さんの家の地図ね。そうややこしくないから、送らなくてもいけるでしょ」
ママは、紙切れをあたしに手渡した。結構くしゃくしゃだけど、大丈夫かなぁ。
「荷物は今日の夜に届く予定だから、他に迷惑のないようにしてね」
「うん、分かった」
「学費はちゃんと仕送りするから。あとは自分でなんとかなさい」
「うん。…ねえ、ママ…--」
トンネルに入ったらしく、あたりが一瞬暗くなった。
「ん?なんか言った?」
「ううん!なんでもないよ!あ、もうすぐ着くから、あたし行くねっ!」
あたしは言いかけていた言葉を飲み込み、開いたドアから足早に外に出た。
まだ春先なのに、予想以上に風が冷たくて、身震いしてしまった。ドアが閉まり、電車は発車した。
「(ママ…なんにも悲しそうじゃなかったな…)」
そんな事を思いながら、あたしはトボトボとメモを頼りに歩き出した。
人差し指で、軽く鍵盤を押してみる。
-ポロン-
あたしはほうと長いため息をついた。
大好きな、傷だらけのピアノ。
「ありがとう、ごめんね」
気づいたら、涙がこぼれていた。服の裾で慌ててぬぐう。その時丁度、玄関からいつもの高い声が響く。
「柚子ー。何やってるの、はやく支度しなさい。もう出るわよ」
「はーい、今行く!」
とっさにピアノの鍵盤に、もうボロボロになったピンク色の布をかけ、あたしはキャリーバックを手に取った。
「じゃあ、行ってくるね」
あたしは急いで家をでた。
時刻は昼過ぎ-。徒歩で数分、駅へと急ぐ母親を追いかけながら、あたしは改札を抜けた。やってきた電車に乗り込む。毎日利用しているのに、この日はなぜか別の意味で緊張していた。
「これ、娘さんの家の地図ね。そうややこしくないから、送らなくてもいけるでしょ」
ママは、紙切れをあたしに手渡した。結構くしゃくしゃだけど、大丈夫かなぁ。
「荷物は今日の夜に届く予定だから、他に迷惑のないようにしてね」
「うん、分かった」
「学費はちゃんと仕送りするから。あとは自分でなんとかなさい」
「うん。…ねえ、ママ…--」
トンネルに入ったらしく、あたりが一瞬暗くなった。
「ん?なんか言った?」
「ううん!なんでもないよ!あ、もうすぐ着くから、あたし行くねっ!」
あたしは言いかけていた言葉を飲み込み、開いたドアから足早に外に出た。
まだ春先なのに、予想以上に風が冷たくて、身震いしてしまった。ドアが閉まり、電車は発車した。
「(ママ…なんにも悲しそうじゃなかったな…)」
そんな事を思いながら、あたしはトボトボとメモを頼りに歩き出した。
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