オラシオンはガブリエルの左上腕部に手を伸ばした。

「きゃ」

 ガブリエルが声を上げる。

「見せてくれ。オマエのその包帯の下を」

 オラシオンはガブリエルの左腕に巻かれた包帯を剥いだ。

 そこには、梵字のア字によく似た刻印が刻まれていた。フリーゼル伯爵の刻印やアリシアの刻印とは形状が違う。

 尤も、伯爵とアリシアの刻印も違うのだが。

 三人の刻印は似ているようで似ていない。

 一体どれが本物の刻印なのだろう?いや、その前に、もう一人の資格を持つ者は誰なのだろうか。

 考え事をしていたオラシオンを現実へ引き戻したのはガブリエルだった。

「大丈夫ですか?」

 ガブリエルに聞かれ、オラシオンは「あぁ」と答えた。