オラシオンは困ってガブリエルにキスするのをやめた。

 アイリーンよりも手ごわいかもしれない。

 なんて考えが脳裏を過ぎる。

「…俺さ、」

 オラシオンは自分に背中を向けているガブリエルに声をかけた。

 ガブリエルが微かに体を動かす。

「王の直系の子供で、ガキん頃から王になるための勉強ばっかりさせられてたんだ」

 俺様な王であるオラシオンがこんな弱っぽい口調で話すのは初めてだった。

 ガブリエルがまたモゾモゾと動く。今まで寝た女は、オラシオンが話を始めると大体は「そんな話よりキスしてよ」なんて言って話を聞こうとしなかった。

 だが、ガブリエルはキスを嫌がりはしたものの、話はちゃんと聞いてくれている。

 オラシオンはそれが嬉しかった。