後宮にいるアリシアの右上腕部には、既に覚醒して白くなった刻印が刻まれているし、フリーゼル伯爵の背中にも覚醒して蒼くなった刻印が刻まれている。

「だが、覚醒したからといって、その者が神になれるわけではない。神の資格を持つ者は四人。その中で本物の神になれるのは一人だけだ」

 オラシオンの言葉に、フィオーレは

「それは心得ています」

 と言った。

「そうか。オマエ、まさかとは思うが…」

 言いかけて、オラシオンはやめた。

 それはあり得ないと思ったからだ。

「何でしょう?」

「いや、なんでもない。オマエは、ガブリエルの刻印が覚醒して、それでどうしたいのだ?」

 オラシオンは本題に話題を逸らした。フィオーレも気にしていないのか、オラシオンが言いかけたことに対しては何も言わなかった。