「実は、村の者に聞いた話なのですが。王様が神にもっとも近づいた者だとお聞きしました」

 フィオーレが言った。

 サーッ

 顔から血の気が失せる音が聞こえたような気がした。

「何故、その村の者はそのことを知っているのだ?」

 オラシオンはそう聞きながらも、自分の声が情けないくらいに震えていることを恥じた。

「その者は、一年だけ王宮で女人として働いていました。その時、王様からその話をお聞きしたそうです」

 フィオーレが答える。

 その女人には心当たりがあった。

 三年前、この王宮で働いた女の中で、唯一オラシオンが道具として扱えなかった女だ。

「その者の名前は、アイリーンか?」

 フィオーレが目を見開いた。

「覚えておいでだったのですね」