「あの、人に聞かれたくない話なのですが」

 オラシオンは頭を下げたままのフィオーレに近寄ると、腕を掴んだ。

「来い。俺の部屋に案内する。そこでなら話せるのだろう?」

◇◆◇◆

 部屋に入ると、フィオーレは物珍しそうに室内を見回した。

「そこにかけろ」

 室内の円卓を指さすと、フィオーレは一礼して椅子に腰かけた。

「話を聞く前に、俺も質問がある」

 オラシオンはフィオーレの向かい側に腰かけた。

 この部屋には世話係の女官とルークしか入れたことがない。客人は大抵ルークを通してしか話さないし、何よりオラシオンは女遊びが好きなため、女と自分しか立ち入れない後宮に女を出迎えることくらいしかないのだ。

「質問、ですか?」

「そう怯えることはない」

 オラシオンは円卓に手を置いた。