覚えているのは、自分が「ガブリエル」であるということ、そして自分が刻印を持っているということくらいだ。

「…お兄さん、誰?」

 ガブリエルが聞くと、男はニコッとほほ笑んだ。

「知らない方がいいと思うよ」

 ガブリエルは、なんだか「聞くな」と遠回しに言われた気がして悲しくなった。

「…あ、ガブリエル起きたの?」

 入ってきた美形の女性はチラッとガブリエルを見た。

 ガブリエルは、彼女が男の名を呼んでくれないかと期待したが、彼女は呼ばなかった。男も、彼女の名前を呼ぶことをしない。

 変な人たちだとガブリエルは思った。