フリーゼル伯爵はそれだけ言って、フィオーレから目を逸らす。
「…儂はとめようとしたんだ。だが、できなかった。…お詫びと言ってはなんだが、儂の力でオマエが王宮へ入れるように上へ持ちかけてみよう」
フィオーレはそれを断わった。
「そんなお詫びなんかいらない。俺は自分の力で王宮へ入って見せる」
フィオーレは言い残して歩き出す。
「なら!」
フリーゼル伯爵の大声に、フィオーレはもう一度足を止めた。
「なんだ?」
「…図々しいかもしれないが、メランコリーの婚約者になってくれないか?無理なことかもしれない。だが儂は過去の歪(ヒズミ)を埋めていきたいんだ…考えてくれないか?」