痣を指で押した途端、オラシオンが「う…」と小さく呻いた。

「…あ、ごめん…。痛かった?」

 ガブリエルはオラシオンから手を離した。その右手に、オラシオンの手が触れる。

「…オラシオン…?」

「…暫く、傍にいてくれ…ないか?」

 ガブリエルはハッとし、オラシオンの顔を食い入るように見つめた。

「……うん」

 呟いてから、ガブリエルはまだ報告をしていないことに気づいた。

「…ねぇオラシオン」

 ガブリエルはオラシオンの名を呼んだ。

「どうした?」

「…あのね、妊娠してたの…」

 オラシオンが息を呑む音が静かな牢屋の中に響く。

「妊娠…だと?」

「うん、オラシオンとの子供」

 オラシオンの左手が宙をさまよった。その手が、ガブリエルの腹に触れた。